カテゴリ:NACHA( 1 )

裏設定

はじめまして、NACHAです。
今回もジャケットを担当させて貰ってます。
よろしくお願いしまうー。

ちょっと語りたいとがあったので、興味ある人だけ↓読んでください。
長いですし。



それでは、ジャケットの絵について少し説明を。

http://www3.kcn.ne.jp/~midnight/cd/destructive/

この娘、よく見ると肉体がないことに気がつくと思う。
頭部以外は不可視の霊体であり、この世のものではない。
いわゆるゴーストであるが、この娘は通常のゴーストとは少し事情が違う。

通常、霊というものは生者の魂が、肉体を離れ浮遊することを差す。
つまり、元々生きているものの魂の姿が霊となる。
しかし、この娘は生まれたときから肉体を持ち得ぬ霊体であった。

もちろん、何もないところから突然生まれたわけではない。

この娘が存在し始めたきっかけについて少し語ろうと思う。



時代としては中世のヨーロッパをイメージしていただきたい。
レンガ造りの街並みが広がり、馬車を引いた人々が行き交う古の世界。
しかし、今のような豊かではなく、庶民の生活は苦しいもので、
パンをめぐって争いが繰り返される、満たされぬ時代のもの。
ただ、そんな中にあっても、優雅に生活する者たちがいる。
貴族と呼ばれる一部の上層階級である。
そんな貴族社会の中に、アスタシアという少女がいた。
年のころは10を数えるほど。
まだ世界の穢れに触れることのない、幼い少女だ。
アスタシアは貴族の娘ではあったが、彼女の両親は、他の貴族に比べればそこまで力があるわけではなかった。
管轄する小さな領地の上納金のほとんどは、別の貴族へと納めなければならない。
それでも、この時代の一般庶民に比べれば明らかに優遇された生活をしていた。
そして、これからも貴族の娘として、苦しみを知らない生活を続けていくはずだった。

アスタシアの生活は貧しくもなく、取り立てて豊かでも無い、平凡な毎日を送っていた。
だが、アスタシアにはある力があった。
現代の言葉で言うならば、魔法と言うべき力である。
今となっては失われてしまった、世界に干渉する奇跡の力。
両親がアスタシアの力に気づいたのは彼女が6歳のときだった。
アスタシアは、両親が差し出した小さなガラス球を、それに触れずして浮き上がらせたのだ。
ふわふわと浮き上がりその小さな手に収まったガラス球を見て、両親は非常に驚いた。
実の娘に、うわさでしか聞いたことのない、神秘とも言うべき力が宿っているのだ。
驚くのも当然だっただろう。
しかし、両親はアスタシアを強く抱きしめたまま、その力を使わないように、きつく言い聞かせた。


魔法を使える者。
人智を超えた奇跡を、人の身でありながら具現化する事の出来る者。
それは魔女として教会から命を狙われる存在だ。
アスタシアには、偶然にも魔女としての才能を授かっていた。
しかし、魔法は災厄を引き起こす。
人一人がふるう力として、それは大きすぎたのだ。
教会は魔法を厳しく禁じた。
そして魔法を使うものを魔女として迫害し、暗躍の元に排除していた。

人前でその力を使えば、瞬く間にうわさは広まり、すぐに教会の者が飛んでくるだろう。
そしてアスタシアは連れて行かれる。
それだけが、両親は恐ろしかったのだ。

幸いにも、アスタシアは素直な娘であった。
両親の言いつけを守り、アスタシアは10歳になるまで一度も魔法を使うことはなかった。
魔法を使わなくても、楽しい生活を続けることができたからだ。

ある日のこと。
領地の長に呼ばれ、両親と共に隣町へ向け馬車を進めていた。
ガタガタと揺れながら進む馬車の中、アスタシアは大好きなりんごを眺めていた。
ハンカチでキュキュと擦っては、ぴかぴかになったそれを見てウットリする。
アスタシアが外出することは珍しかった。
まだ、吹き込む風は冷たかったが、穏やかな陽気に気分もよかった。
そんな折、馬車が揺れた衝撃につい手を滑らし、りんごを落としてしまった。
りんごは馬車から転がり落ち、無残にも地面で砕けてしまう。
だが次の瞬間、粉々になったはずのりんごは再びふわりと浮かび上がり、何事もなかったかのように少女の手元に戻って

いった。
反射的に魔法を使っていたのだ。
アスタシアはしまった、と思った。
禁止されていた魔法を使ってしまえば、両親にこっぴどくしかられると思ったからである。
恐る恐る、両親の顔色を覗ってみる。
しかし、両親は前を向いたまま変わりはない。
どうやら気づかなかったようだ。
小さく安堵する。
心の中で神様にお礼をし、また美しいりんごの輝きに見とれた。

だが、この出来事が、アスタシアの運命を変えてしまう。
アスタシアの起こした小さな奇跡を、偶然にも見ていた男がいたのだ。
その男は教会に仕える者だった。
男は目を見開き、胸の前でゆっくりと十字を切り、祈りを捧げた。

両親がずっと恐れていた事態が、とうとう起ころうとしていた。

それから数日後、アスタシアが部屋で本を読んでいるとき異変は起きた。
屋敷の入り口の方で、問答する声が聞こえてきた。
いつもと違う雰囲気に眉根をよせる。
ハードカバーを机に置き、そっと様子を伺って見た。
どうやら、数人の男がやってきて、両親ともめているようだ。
心配しながら様子を見た。
男たちは、十字を背負った聖職者の服装であるが、袖からのぞく太い腕を見れば、屈強であることが伺えた。
どうやら男たちが一方的に両親に詰め寄っているようだ。
父親がなんとかこの場を収めようと必死になるが、そのうちに突き飛ばされてしまった。
それを見て、アスタシアは飛び出していた。
来てはダメだ、という父親の叫びも聞こえず、父の元に駆け寄る。
アスタシアを見た男たちはいっせいに騒ぎ立て、嫌がる彼女を押さえつけた。

アスタシアはその場で捕らえられ、牢へ拘束されてしまった。
そこは教会の中枢である大聖堂の地下。
誰も知る事の無い教会の暗部。
何が起こったのか、アスタシアは全く理解できなかった。
どうしてこんなとこに連れてこられたのか、どうして父は責められていたのか。
混乱するアスタシアをよそに、魔女裁判が進められた。
教会がアスタシアに下した審判は、聖なる炎による浄化。
つまり、火刑である。
アスタシアは、魔女としてこの世から排除されることが決まったのだ。

アスタシアは、縛られたまま磔にされた。
周りには教会の者複数人が取り囲んでいる。
何がなんだかわからなかった。
アスタシアは恐怖と、縛られたベルトの痛みに泣きじゃくっていた。
しかし、一人の男が近づき、アスタシアの足元に、手に持ったタイマツの炎をくべた。
小さな足に、容赦なく恐ろしい炎が絡みつく。
お気に入りの靴は焼かれ、消し炭へと変わっていく。
苦悶の悲鳴を上げるアスタシア。
今までに味わった事の無い熱さと恐怖が、幼い少女を責めたてた。
神の身元にて行われるそれは、異形の光景であった。

しかし、とっくに靴はぼろぼろと崩れてしまったにも関わらず、アスタシアの小さな足は、わずかな火傷を負うのみで、

未だに健在である。
通常ならとっくに焼け焦げてしまってもおかしくない。
どうやら無意識のうちに魔法で肉体を保護していたのだ。
その状況を見た教会の者たちは、険しく眉根をよせ、さらに少女の足元の炎を追加するよう命じた。
悲鳴がさらに大きくなった。
真っ白なその足にじりじりと炎が移り、焦げ付き、黒へ変色していく。
熱い。熱い。
叫んでも、もがいても、皮のベルトが皮膚に食い込むだけで、ほどけることはない。
可愛らしいドレスも、レディになるためのペチコートも、凶悪な炎にさらされ、めらめら燃え尽きていく。
助けて。助けて。
足先が焼け落ち、足首が焼け落ち―
地獄の苦痛を受け続けながらも、アスタシアはまだ絶命していなかった。
死にたく無い。死にたく無い。
アスタシアの膨大な魔力が、逆に苦しみを持続させていた。
生きながら身を焼かれる。
気が狂いそうだった。
いや、すでに狂ってしまっていたのかもしれない。
年端もいかぬ少女が受ける苦しみとしては、あまりにも酷過ぎた。
熱い、痛い、助けて、やめて、苦しい、怖い、嫌だ、死にたく無い、なんでこんなことするの――――
灼熱の中、アスタシアは叫び続けた。

炎がやがて内臓を焼く頃。
アスタシアの悲痛な叫びが、ある魔法を練り上げていた。
死にたく無い、生きていたい、という願いが作り出した魔法。
アスタシアは魔力の使い方を知らない。
だから、こんな形になってしまった。
生きたい、という事だけを願ってしまった。
そして、その魔法を実現するだけの魔力を持った者であった。

やがて、炎がその小さな胸にまで届き、心臓を焼き尽くしたとき、アスタシアは絶命した。
また一人、不幸な魔女がこの世から消え去ったのだ。
だが、アスタシアが死の寸前で使った魔法は、この世に存在していた。

誰もいない暗闇にぼんやりと浮かぶ儚い姿。
アスタシアゴースト。
死の間際に願った悲痛の叫びが生み出した、この世ならぬ存在。
形はアスタシアと同じ。
頭部と手だけであるのも、アスタシアが命を焼き尽くされた姿と同じ―

しかしそれは、アスタシアであって、アスタシアではなかった。
魂を移したものではなく、映したもの。
生まれた者でありながら、魂を持たぬもの。
彼女自身、なぜ自分がここにいるかという事は知らない。
アスタシアとしての生前の記憶は彼女にはない。
ただ、”生き延びる”という行動理念だけが残っている。
不完全な術故に、あるべき肉体はない。
肉体があったはずの場所には、身を焼いた恐るべき炎がこびり付いている。
触れようとしても、すべてのものが、あの忌まわしい炎の温度で焼きついてしまう。

自分が何者かも知らず、何者にも触れられず、ただ”生き”続ける。
それだけが彼女を支配していた。
人に見つかってはいけない。
見つかれば生き続ける事が出来ない。
そうして人を避け、光を避け、永遠の時間を生きている。
だれもいない荒廃した舘は、ただ一つの願いを叶えるに都合がよかった。
そこがかつて、両親と平和に暮らしていた思いでの場所であることすら、彼女は知りえない。
永遠に。
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by sprite-wing | 2008-03-01 11:55 | NACHA